NTTドコモビジネス、「AI上司」を全37組織に200超導入
国内最大の携帯電話会社グループで法人事業を担うNTTドコモビジネスは、管理職の考え方を反映した「AI上司」を社内の全37組織に広げた。2025年10月に最初の導入が始まってから約1年での拡大で、日本経済新聞(日経)が10月7日に報じた。部長や課長などの管理職をモデルにしたAI上司は、すでに200を超える。
AI上司は、管理職の判断基準や業務知識をもとに、会議の議事録や社内資料を根拠として社員の相談に答える。本人の口調に寄せた受け答えもできる。社員は完成した資料をいきなり上司に持ち込むのではなく、まずAI上司に見せ、経験豊富な管理職の目から見て弱い論点を指摘してもらい、修正してから実際の報告に臨む。各組織はマイクロソフトの生成AIサービスを使って独自のAI上司をつくっており、簡易版なら約1時間で作成できると、韓国のソウル経済新聞(Seoul Economic Daily)が日経の報道として伝えた。9月末時点で、社員がつくったAIエージェントは社内で約2万8000に達している。
同社は社長の小島克重氏を模したAI「AIコジー」も運用している。幹部会議での発言約30万文字を学習させたもので、幹部約70人による3カ月の試行では、約90%が社長の考えの理解に役立ったと答えた。7月には約1万人の全社員に公開した。元になる議事録からは、あるAIが顧客名や契約金額を削除し、別のAIがその結果を再確認したうえで、処理済みの情報の10%を人が抜き取りで点検している。
実務で何が変わるか
今回の新しさは、AIが模す相手が社長から身近な課長へと移った点にある。経営方針を伝える道具が、日々の仕事を進める道具に変わりつつある。役員を模したAIは他社にも広がっており、三井住友フィナンシャルグループは「AI CEO」を構築し、キリンホールディングスは経営会議で「AI役員」を活用している。ただし限界もある。AI上司が知っているのは文書として残っている内容だけで、上司の考えが最近変わっていれば古い判断を返す可能性がある。本人らしい口調で答えると、実際以上に正しく見えやすい。数字や期限は原典で確かめる必要がある。
ドコモビジネスによると、社内システムに関するヘルプデスクの問い合わせは10件中8件をAIが解決しており、社内認定制度を通じて1万4000人の社員にAIの基礎スキルを身につけさせた。2030年度に生産性を2024年度比で30%高める目標を掲げ、システムの外部販売も視野に入れる。グループとしてはNTTとソフトバンクによる国内完結型のAIサイバーセキュリティなどの取り組みがあり、企業での活用では住友生命が計画するAIを使った営業職員向けの提案づくりのような例も出ている。
今後の注目点は、AI上司が外部に販売されるかどうか、管理職の考えの変化に合わせて回答の正確さをどう保つか、そして実在の上司を模したAIを社員がどう受け止めるかである。