モデル

リコー、オンプレミスで日本語文書を推論する35B規模のMoE型マルチモーダルモデルを開発

· 約6分で読了 · モデル

リコー、オンプレミスで日本語文書を推論する35B規模のMoE型マルチモーダルモデルを開発

リコーは、日本語の文書や図表、表をクラウドに送らずに生成AIで読み解きたい企業向けに、マルチモーダル大規模言語モデルを開発した。ZDNET Japanが10月16日に報じた。前日に発表された「リコーLMM_35B-A3B」は、アリババクラウドのMixture of Experts(MoE)型モデル「Qwen3.6-35B-A3B」をベースに、リコー独自の強化学習とカリキュラム学習の技術を加え、日本語での推論性能を高めたものである。

最大の特徴はMoE構造だ。総パラメータ数約350億のうち、1トークンごとに稼働するのは約30億パラメータにとどまる。入力ごとに少数の「専門家」サブネットワークだけを選んで動かすため、同規模のDense型モデルに比べて1トークンあたりの計算量を大きく抑えられる。最大256,000トークンの長文コンテキストに対応し、画像に加えて動画の入力も扱える。

リコー独自の「JDocQA-Reasoning Benchmark v2.0」では、スコアがベースモデルの0.816から0.841に向上した。稼働パラメータが約9分の1でありながらDense型の「Qwen3.6-27B」(約270億パラメータ)と同水準で、商用クラウドモデル「GPT-5.6 Sol」の0.821をわずかに上回ったという。日本語AIエージェント評価ベンチマーク「j-tau-bench」の通信事業者カスタマーサービスのシナリオでは、タスクの成功率が62.4%から77.7%に上がった。同じ内容を繰り返し出力する「ループ回答」の抑制も寄与した。

実務で何が変わるか

リコー、オンプレミスで日本語文書を推論する35B規模のMoE型マルチモーダルモデルを開発(イメージ写真)

リコーはNvidiaのBlackwell世代以降のGPU向けに量子化したNVFP4版も開発した。小型AIサーバー「DGX Spark」1台で動作し、1問あたりの応答時間をBF16版の約3分の1に短縮する。リコージャパンは11月から、同モデルを「RICOH オンプレLLMスターターキット」に順次搭載する予定で、6月に発表したDense型の「リコーLMM_27B」(約270億パラメータ)と軽量の「リコーLMM_9B」(約90億パラメータ)と並ぶラインアップとなる。

買い手にとって、この提案は機密データを日本国内にとどめる流れと重なる。たとえばNTTとソフトバンクによる、データを国内に保つAIサイバーセキュリティの拡大がそうだ。評価の目も厳しくなっている。AISIによる国産モデル評価基準づくりやさくらインターネット・PFN・NICTの能動的評価基盤は、調達担当者がベンダー自身のスコアと並べて確認できる独立した数値を近く提供する可能性がある。

注目点は、第三者がリコーのベンチマーク結果を再現できるか、公共部門の顧客が中国発のオープンウェイトを基にしたモデルをどう評価するか、そしてスターターキット出荷時の価格である。

← AI4Japanトップへ戻る