KDDI総合研究所、実機ロボットAIの国際ベンチマーク「RoboChallenge」で世界1位に
通信大手KDDIの研究開発会社であるKDDI総合研究所は、実機のロボットでAIを評価する国際ベンチマーク「RoboChallenge」の最新評価部門「Table 30 V2」で世界1位を獲得したと明らかにした。シミュレーションではなく実際のロボットで性能を測るのが特徴である。同社は10月5日に結果を発表し、順位は同日時点のものだと付記した。多くのチームが毎日この部門で試験を行っているため、成功率と順位は日々変動する。
RoboChallengeは同種の評価基盤として世界最大規模をうたい、これまでに10万回を超える実機試験が実施された。参加者には中国の大手テック企業や有力なヒューマノイド開発企業も名を連ねる。Table 30 V2は4種類のロボットと30の実環境タスクを用い、両腕の協調や柔らかく変形しやすい物体の扱いといった難しい課題を含む、手先による操作の性能を測る。
KDDI総合研究所は2つの技術を勝因に挙げる。1つ目は、カメラの映像と自然言語の指示をロボットの動作に変換する複数のVLA(Vision-Language-Action)モデルの知識を統合する手法だ。より強いモデルの出力を忠実に再現するよう学習させる従来の方法とは異なり、物をどれだけ強く握るか、いつ持ち手を替えるかといったタスクの成否を左右する場面でだけ強いモデルの動作に厳密に従い、それ以外では柔軟性を認める。2つ目は、物理的な因果関係を予測するAIである「世界モデル」を使い、候補となる各行動計画がどのような結果になるかを事前に予測して、成功の可能性が最も高いものを選び、ロボットの動作速度も調整する手法である。活用したモデルには、Dexmalが公開したオープンソースのVLAモデル「DM0.5」も含まれる。
実務で何が変わるか
実機でのベンチマークはシミュレーションより攻略しにくいが、日々変動するランキングでの首位はあくまで一時点の結果にすぎない。より重要なのは技術の次の行き先である。KDDI総合研究所は、この手法を経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する生成AI開発支援プログラム「GENIAC」での同社プロジェクトに活用するとしている。同プロジェクトは、小売や物流の現場業務を担えるロボット基盤モデルの開発を目指す。早稲田大学のJiang Liu教授が、実機での事前評価とモデル調整を支援した。
今回の成果で、日本のフィジカルAIの取り組みに通信グループも加わった形だ。日立とファナックによる工場向けの提携や、フィジカルAIの学習に役立てる工場機械IDの付与、川崎重工が公開したHome Leoと溶接ロボットと並ぶ動きである。
今後の焦点は、他チームが新たな試験を重ねるなかでKDDI総合研究所が首位を維持できるか、技術の詳細を公表するか、そしてGENIACの支援を受けたロボットモデルが、同社が挙げる製造や設備保守とともに、実際の店舗や倉庫にいつ導入されるかである。