Sakana AI、シュミットフーバー氏を首席科学顧問に 自己改善AIの研究所を指導
東京のSakana AIは2026年9月24日、現代の深層学習と世界モデルの先駆者として広く知られるユルゲン・シュミットフーバー氏が、ほかの役職を続けながら首席科学顧問に就くと発表した。日経アジアが翌日に確認した。シュミットフーバー氏は、Sakana AIが新設した「再帰的自己改善(RSI)研究所」と、ロボットや工場システムが動く前に物理的な結果をシミュレーションするエージェント型の世界モデルの研究を指導する。今回の人事は研究面のシグナルであると同時に人材を引きつける狙いもある。Sakana AIは、消費者向けのチャットボットだけを追うのではなく、基礎科学と国内の製造・ロボットの基盤を組み合わせることで、日本はAI人材の流出を食い止められると主張している。
2026年9月26日付の本稿(カテゴリー:産業)は、今回の就任を、前日に報じた職場へのロボット導入とは異なる、日本の物理AI研究のニュースとして扱う。シュミットフーバー氏は公の場で、ニューラルネットワークの構造とロボット工学を橋渡しする重要性を強調し、福島邦彦氏のネオコグニトロンから甘利俊一氏の理論研究に至る日本の系譜に触れた。そのうえで世界モデルを、現実世界での果てしない試行錯誤を許容できないものづくりのサプライチェーンにとっての「認知エンジン」と位置づけた。
なぜ重要か。日本の工場は、自律化を広げる前により安全なシミュレーションを必要としている。世界モデルの研究は費用のかかる実験を減らしうる。ただしそれは、安全性の論証、データセットの出所、人が停止する権限が個々のエージェントに伴う場合に限られる。
実務で何が変わるか
日本の研究開発と工場の責任者は、将来どのラインでシミュレーションによる展開を使う可能性があるかを洗い出し、RSIの実験について評価基盤の明示を求め、物理AIのリスク審査を担う責任者を決め、既存のデジタルツインと比べる検証を期間を区切って行い、取り返しのつかない操作は人が担う設計を選ぶべきである。今回の人事はSakana AIのモデル連携技術「Fugu」や人手不足に対応する国内のAIロボット導入とあわせて読みたい。
まず留意点を挙げる。顧問の肩書は製品の出荷日ではなく、「再帰的自己改善」というスローガンは監査可能性を先取りしがちで、物理AIは依然として労働法や製造物責任の問題に突き当たる。そのためAI4Japanは、RSIのベンチマークと工場での実証が公表されるまで、シュミットフーバー氏の就任を方向性を示す産業情報として紹介する。
今後の注目点は、RSI研究所の最初の公開論文、シュミットフーバー氏がどの程度東京でパートナーと活動するか、そしてメーカーが世界モデルの実証に共同で資金を出すかどうかである。関連記事はAI4Japanのトップページで、ほかの解説はニュース一覧で読める。
結論として、本稿は指示ではなく状況を把握するための材料として読んでほしい。日本のAI研究は物理システムに向けて基礎研究の人材を呼び込んでおり、まだ初期段階にある。最も恩恵を受けるのは、シミュレーションの根拠を求め、現場の権限を人が持ち続け、顧問就任の発表を完成した自律化と取り違えない組織である。