デジタル庁、ガバメントAI「源内」で政府職員18万人向けにAIエージェント環境の提供を開始 「源内基準」も公表
デジタル庁は、政府職員約18万人が利用する生成AI環境「ガバメントAI 源内」で、職員自らがAIエージェントを作成・実行できる環境の提供を始めた。Impress Watchが10月21日に報じた。「エージェントチャット」を10月20日から各府省庁などへ順次導入し、より高度な開発環境「源内工房」は年末ごろまでの導入を目指す。
エージェントチャットは対話型AIの発展形と位置づけられ、職員が自然言語で作業を指示すると、エージェントが複数の手順をまとめて実行し、ファイルの参照やウェブ検索を行い、結果を文書として出力する。デジタル庁はこれを「Claude Cowork」相当としている。「Claude Code」相当とされる源内工房は職員ごとのWebアプリ開発環境で、任意のサイトへのアクセス、コマンド実行、ファイル操作を数十から数百の手順まで連鎖させ、実際に動くプロトタイプの作成まで対応する。三つ目の柱となる「源内ライブラリ」では、職員が作ったスキルを府省庁の枠を越えて共有する。同庁は、こうした環境を一般職員が日常業務で使える政府共通基盤としてこの規模で導入するのは世界初だとしている。
あわせて、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)の協力を得て策定した「ガバメントAI源内 ガバナンス・セキュリティ・セーフティに関する基準」(源内基準)を公表した。基準は「利用者」、各府省庁のAI統括責任者などの「管理者」、デジタル庁の「源内開発者」という立場ごとに責務を定める。職員は出力の根拠や限界を理解した上で判断し、重要なファイルを事前にバックアップし、処理範囲を限定して結果を検証し、異常があれば直ちに停止して報告することが求められる。理解できない処理は実行しないことも明記した。
実務で何が変わるか
今回の導入で、政府は国内最大級の職場向けAIエージェントの実験場となる。企業ではすでにNTTドコモビジネスの「AI上司」のような動きが広がっている。高性能AIの社会実装を求める首相の指示に実務面の裏付けを与えるとともに、AIセーフティ・インスティテュートによる国産モデル評価指標の整備の知見も生かす形となる。
基準はリスクを率直に列挙している。エージェントの処理の初期段階での誤りが後続の手順に連鎖するおそれ、確認されていない出力を行政上の通知などに使えば国民の権利利益に影響しかねないこと、そしてウェブへの直接アクセスと長時間の自律実行の組み合わせが、サプライチェーン汚染や意図しない情報流出の経路になり得ることを指摘した。
今後の焦点は、今後数週間でエージェントチャットを導入する府省庁がどこまで広がるか、源内工房が予定通り稼働するか、そして両環境を誰でも利用・改変・再配布できる「源内OSS Ver.2.0」として2027年2月ごろに自治体や民間企業向けに公開する計画の行方である。