日東工業、日本IBMの支援で設備図面から分電盤見積情報を抽出する生成AIアプリを開発
電気設備メーカーの日東工業は、建物や設備の図面を読み取り、分電盤の見積に必要な回路情報や機器情報、特記事項を抽出するマルチモーダル生成AIアプリケーションを開発した。同社と日本IBMが10月20日の共同リリースで明らかにした。全国23営業拠点の約50人の営業担当者が利用でき、今月から段階的に実業務での運用を始める。
分電盤の見積は長く熟練者に頼ってきた。案件ごとに形式の異なる図面が届き、担当者は法規制や製品仕様を読み取ったうえで機器や回路構成を決める必要がある。両社は約一年半をかけて見積ノウハウの整理と業務知識の構造化、人とAIの役割分担の定義、運用体制づくりを進め、ツールの本稼働につなげた。
新しい業務フローでは、AIが図面を読み取って情報を整理し、営業担当者が抽出結果を確認・補正する。AIの抽出結果と人による修正はいずれも構造化データとして蓄積され、これまで個々のベテランに依存していた見積の知見を組織で共有・継承できるようにした。日本IBMは統合AI基盤のリファレンス・アーキテクチャーと、自社業務への適用で得たClient Zeroの知見に基づくAIエージェント・フレームワークで構築し、特定のAIモデルに依存しない構成だとしている。
実務で何が変わるか
今回の取り組みは、東京電力による原子力許認可書類の生成AIチェックの試行やリコーの日本語文書推論向けマルチモーダルモデルと同様、専門性の高い技術文書に生成AIを向ける国内の動きに連なる。共通するのは人手の問題である。建設・設備業界は人材不足と専門家の引退に直面しており、判断の知見をデータとして残すことは処理速度と同じくらい重要だ。
営業担当者を確認役として残すことは、実務上の安全策でもある。図面上のブレーカー定格を読み違えれば見積を誤り、現場に誤った盤が届きかねない。精度の成否はこの確認工程にかかっている。両社はAI活用の拡大を見据え、全社レベルのAIガバナンスやAIセキュリティー、AIアーキテクチャーのあり方も検討している。
今後の焦点は、現場からのフィードバックで図面の読み取り精度がどこまで上がるか、対応できる図面の種類がどこまで広がるか、そして日東工業が計画通り設計・生産・保守といった周辺業務へ展開するかである。