ディリーバの外科特化型生成AI、CEATEC AWARD 2026でイノベーション賞
手術中に何が起きているかを理解するために作られた日本のAIモデルが、今年のCEATECの賞を受けた。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は10月6日、Direava(ディリーバ)の外科特化型生成AI「Surgical VLM」が「CEATEC AWARD 2026」のイノベーション賞を受賞したと発表した。このモデルは、NEDOが経済産業省と実施する生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」の下で開発された。
モデルは内視鏡手術の映像を解析し、術野に何があるか、どのような操作が行われているか、その背景となる外科的知識は何かを言語化する。NEDOはこれを、臓器や血管・神経を認識する外科医の「目」としてのAIから、状況を解釈する「頭脳」に近い存在への転換と位置づける。ディリーバは、この種の基盤モデルとしては国内初だとしている。
学習用の質問応答データは外科医自らが作成し、対象、動作、根拠、次工程の計画という4つのカテゴリで構造化した。チームはそのデータを使い、大規模な日本語マルチモーダルモデルをフルパラメータ・ファインチューニングした。評価基準が存在しなかったため、外科専門医が回答を5段階で採点する独自ベンチマーク「Surgical-VLM Bench」も策定した。大学病院の手術室で行ったリアルタイム実証では、解剖学的正確性84.7%、臨床的有用性82.9%を記録した。
実務で何が変わるか
この技術が求められる背景には人口構造の変化がある。NEDOは、消化器外科医が今後20年で約半減し、2040年にはがん手術を担う医師が約5000人不足するとの予測を挙げる。ディリーバはまず、若手外科医や医学生、地方の中核病院を対象とする手術教育から始める計画だ。必要な薬事手続きを経た後に術中の情報提示を検討し、将来的には部分自動化も視野に入れる。
人手不足は、日本でAI導入を後押しする要因として繰り返し現れる。AIロボットの導入を進める企業から原子力の申請書類で生成AIを試す東京電力まで例は多い。医療分野にも画像トリアージの手順を共有する病院ネットワークという前例がある。
注目点は、10月13日から16日まで幕張メッセで開かれる「CEATEC 2026」のNEDOブースでの展示と、手術の展開を予測して安全性を高めるモデルを開発するディリーバの次のGENIACプロジェクトの進展だ。