政府、AIの社会実装を阻む規制の「困りごと」を10月19日から募集
日本政府は、AIの妨げになっている規則を企業から具体的に聞き取る。内閣府、デジタル庁、経済産業省は10月2日、AIの開発・提供・利用で直面する「困りごと」の報告を、10月19日から10月30日まで内閣府ウェブサイトの専用フォームで受け付けると発表した。
対象は幅広い。大規模言語モデル、マルチモーダルAIやエージェントAIに加え、AIロボット、完全自動運転、AIドローンといったフィジカルAIも含む。法律や政令から省令、告示、さらに実際の運用を左右することの多い通知・通達まで、あらゆる規制が報告の対象になる。寄せられた情報は各規制を所管する省庁と共有される場合があり、提出者に確認の連絡が入ることもあるという。
今回の募集は、7月14日に閣議決定された改定版「AI基本計画」を起点とする。同計画は政府がAIトランスフォーメーションを主導し、特定の産業向けに作られた垂直型AIを推進すると明記した。集まった意見は規制改革推進会議の審議と、計画の今後の改定に反映される。前回の同種の募集は、歩行ロボットの公道走行や宅地建物取引士の業務といった具体的な見直し項目につながった。
実務で何が変わるか
企業にとって募集期間は約2週間と短く、文章の巧みさより準備がものを言う。役に立つ報告とは、具体的な条文、それによって止まった案件、実行可能な代替案を示すものだ。工場や介護現場の規則は自律機械が登場するずっと前に作られたため、川崎重工の2030年人型ロボット目標を追うロボット企業は当然の当事者になる。
時期は、首相が指示した高性能AIの普及に向けた年末のアクションプランとも重なる。規制改革は閣僚に求められた柱の一つであり、10月下旬に集まった声はその計画や2027年度予算の議論に素早く反映される可能性がある。
慎重にみるべき理由もある。意見募集は規則の変更を約束するものではなく、グレーゾーンの指針は明確な禁止規定より直しにくいことが多い。規制対応の担当者を持たない中小企業は期限内に詳しい事例をまとめにくく、議題が大手に偏るおそれもある。
注目点は、政府が公表する報告件数、規制改革推進会議の答申にどの項目が入るか、そして公道を走るロボットや都市上空のドローンといったフィジカルAIが独自の検討枠を得るかどうかだ。日本でAIを開発する者にとって、10月19日に開くフォームはルールを作る側に直接声を届ける貴重な窓口になる。