福井県、PKSHAの議事録AI「YOMEL」を全職員約5,400人に展開 2カ月で約434時間を削減
福井県は、PKSHA Infinityが開発するAI議事録作成ツール「YOMEL」を約5,400人の全職員が使える環境を整え、導入から2カ月で議事録作成にかかる時間を推計約434時間削減した。マイナビニュースのTECH+が10月23日、福岡市に本社を置く同社が同日公開した導入事例をもとに報じた。
導入前、県職員は文字起こしツールや生成AIサービスなどを組み合わせて議事録を作成していた。作業の手順が多く職員の負担が大きいうえ、作成者によって議事録の精度にばらつきが出ることも課題だった。そこで県のDX推進課が全庁で使えるツールを検討し、会議中にボタンを押すだけで録音でき、音声ファイルを後からアップロードする必要がない手軽さと、文字起こし・要約の精度の高さを決め手にYOMELを採用した。
YOMELは専用アプリをインストールして使い、Zoom、Google Meet、Teamsなど既存の会議ツールをそのまま利用できるため、会議システムを変える必要はない。PKSHAが独自に開発した音声認識エンジン「Olaris」を搭載し、自然な会話の認識や話者の自動分離に対応する。福井県は導入前に簡易マニュアルを全職員に配布し、使い方に関する問い合わせはなかったという。利用は庁内会議から市町や事業者との打ち合わせへと広がり、2カ月間の利用時間は合計約1,040時間に達した。会議直後に議事録ができあがるため関係部署への情報共有が早まり、管理する側も部署ごとの利用状況を月単位で確認できるようになった。
実務で何が変わるか
会議の記録は、国内の自治体が生成AIを使う代表的な場面の一つである。PKSHAは、自治体における生成AIの用途として「議事録の要約」が2番目に多いとする総務省の調査と、2040年には自治体職員が現在の半数になるとの総務省研究会の見通しを挙げている。福井県にとっての意味は、特定の製品そのものよりも、専門知識を持たない職員がAIを日常的な道具として使うようになる点にある。国も同じ方向に動いており、デジタル庁は「源内」で約18万人の政府職員にAIエージェントの利用環境を広げている。民間でも、NTTドコモビジネスがAIアシスタントを各組織に展開するなど、大組織での活用が進んでいる。
一方で福井県は、活用が十分に進んでいない部署もあると認めている。今後は正式な議事録の作成に加え、ちょっとした打ち合わせの備忘録としての利用も促し、利用率の向上を図る。PKSHAによると、YOMELの導入企業数は2026年3月末時点で2,000社を超える。
今後の焦点は、他の都道府県が同様の時間削減の数字を公表するかどうか、そしてAIが作成した議事録が公文書の一部となるなかで、正確性の確認や記録の保存をどう扱うかである。